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Mr. Matsushita's Breath Hold Training
高校生のシンクロ選手における息こらえ時間
1.はじめに
シンクロナイズドスイミングという競技は美しさの反面水面下では過酷な息こらえが行われている。選手ともなれば泳力はもちろん息こらえ能力も高くなければならない。選手のほとんどが小学生の時から水泳を始めているが、最初から息こらえ能力が高いわけではない。息こらえ時間は繰り返して訓練すると相当時間延長することが知られている。また水泳の経験者は心肺機能が発達しているため一般の人より息こらえ時間が長くなる。ましてやシンクロの選手ともなれば、息こらえ時間は相当長いものと考えられる。そこでスイミングクラブのシンクロクラスに所属する高校生8名の息こらえ能力について研究をした。小学生の時から始めた者もいれば、高校生になってから始めた者もいる。
2.被験者 シンクロクラスの女子選手8名(15歳ー18歳)
A 15歳 高校より始める
B 15歳 高校より始める
C 15歳 小学生から始める
D 16歳 中学生から始める
E 17歳 中学生から始める
F 17歳 中学生から始める
G 17歳 高校より始める
H 18歳 中学生から始める 全ての選手がシンクロの諸大会において入賞の経験はない
3.息こらえテストの実施方法
その1 安静時に大きく2回深呼吸をして次に大きく息を吸い右手で鼻をつまみ立位で出来るだけ長く息を止める。2分間の休憩の後これを2回測定する。
その2 シンクロ用プールに入りノーズクリップをはめ大きく2回深呼吸をして次に大きく息を吸い水中に潜り出来るだけ長く潜っている。なお体が浮かないようにプールの階段の鉄パイプを握ってもらった。2分間の休息後これを2回測定する。なお水中では息は吐かない。
その3 10分の安静後1秒間に3回の割合で1分間その場駆け足をしてその直後に大きく息を吸い右手で鼻をつまみ立位で出来るだけ長く息を止める運動直後息こらえテストを実施した。なおこのテストのみ1回である。全ての息こらえテストにおいてタイムは読み上げない。
4.結果 かっこ左より その1,その2,その3の順 かっこ内左が1回目、右が2回目 単位は秒
A ( 87 115) ( 75 102) (47)
B ( 96 131) (100 106) (48)
C (156 135) (122 130) (68)
D ( 79 91) ( 65 79) (25)
E (174 217) (152 168) (79)
F (183 206) (153 146) (62)
G ( 99 107) ( 86 89) (38)
H (191 226) (202 215) (80)
5.考察
息こらえに慣れている被験者のため1回目と2回目では有意な差は認められない。1回目と2回目の差は1回目より2回目の方がよい記録を出そうという意志が働いているものと思われる。息こらえに慣れていない者については、反復練習により有意な差が認められている。また陸上と水中では、水中の息こらえに慣れているためこれも有意な差は認められない。また運動直後の息こらえにおいては一般の人の2~5倍の結果が出ている。これは明らかに心肺機能の差であると思われる。最後に言えることはシンクロナイズドスイミングの選手の息こらえ能力及び心肺機能は、一般の人のそれとは比較にならないほど優れているということである。これは生まれつきのものもあるが、ほとんどが厳しい練習や訓練によって身についたものである。