​ハイパーベンチレーション

ハイパーベンチレーションという名前を聞いた事はあるだろうか。あまり聞き慣れない言葉だ。ベンチレーションならわかるであろう。空気の入れ換えである。実はこのハイパーベンチレーションと言うのは、肺(肺胞)の中の強烈な空気の入れ替えである。つまり、特に呼気を強めた大きな深呼吸を何回も繰り返す事である。一般生活の上では、この様な事は全く必要が無い事である。医学的には、例えば脳波をとる前に行ったりする事がある、と聞いた憶えがある。では息こらえと、このハイパーベンチレーションは、何の関係があるのだろうか。実はこのハイパーベンチレーション、息こらえ時間を延ばす為に非常に有効な手段である。今ここに男子大学生4名を被験者として息こらえテストを実施した。いずれの被験者も安静時息こらえ時間60秒未満の者である。尚、このテストは80秒と時間を決めタイムを読み上げて行った。呼気を強めた大きな深呼吸を6回行い、その直後に大きく息を吸い込み片手で鼻をつまみ、80秒だけ息こらえテストを行った。いずれの被験者も70秒を過ぎてもほとんど苦しくないと言っている。ハイパーベンチレーションの効果が現れているのである。またこのうち3名はハイパーベンチレーション後にクラクラする感じを訴えている。この実験から、もうすでにわかっている事ではあるが、ハイパーベンチレーションは確実に、息こらえ時間を延ばす事がわかる。では、我々の生活で、息こらえ時間を延ばす事が必要な場面はいつ出てくるか。スキンダイビング(いわゆる呼吸の為の器具をつけない素潜り)である。海中に長く潜っているには、このハイパーベンチレーションは、非常に有効な手段である。また逆に非常に危険な行為でもある。ともすれば命を失う事になりかねない、と心得ておく必要がある。では、何故そんなに危険なのか。まず最初に、長い間、息を止めていると、何故苦しくなるのかを説明する。息を止めている間に酸素は消費され、二酸化炭素は増加してくる。この事は肺の中の肺胞中(もちろん血液中も同じ)の酸素分圧の減少、及び二酸化炭素分圧の増加を意味している。二酸化炭素分圧(血液中の二酸化炭素量)がある一定の値(閾値)まで上がると脳の呼吸中枢を刺激して脳が呼吸再開の指令を出す訳である。そして息こらえがストップして呼吸を開始するのである。ここで呼吸を開始すれば苦しかっただけで何の障害もない。では、ハイパーベンチレーションを行うとどうなるか。呼気を強めた大きな深呼吸を何回もするために、肺の中の酸素分圧は若干上昇し、二酸化炭素分圧は減少する。この状態で息こらえに入ったらどうなるか。二酸化炭素分圧(血液中の二酸化炭素量)が閾値に達するまでの時間が、普段より長くなるので当然、息こらえ時間は長くなる。息こらえ時間が長くなると言う事は、その間に酸素はどんどん消費されている訳であるからブラックアウト(脳の酸欠状態)間近の状態、ともすればブラックアウトを起こしてしまう事になる。これが水中であったならば危険度はさらに増大する。長い時間ブラクアウト間近まで水中に潜っていたとしよう。水中から浮上しようとすると、水圧が低下する為、酸素分圧もさらに低下する。自分では大丈夫だと思っていても、水面に達する前にブラックアウトを起こしてしまう。水中でのブラックアウトは、下手をすれば取り返しのつかない事になってしまう場合もある。

 

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